機能和声に於いて、Vに代表されるドミナントからIに代表されるトニックへと進行する和声進行「ドミナントモーション」。
V7→I、V7→VI、などですね。コード進行でC majorで言うと、G7→CとかG7→Am。
C→Dm7→D7→G7→Cだと、D7→G7もドッペルドミナント(属和音上のドミナントモーション)として成立していますね。 「進行としてのドミナントモーション」はこの辺で置いておいて(詳しいことはまたの機会に。)、概念を広げて「音楽の流れに於けるドミナントモーション’を考えてみましょう。
先日、後輩のサウンドデザイナーと話していましたら、彼はノイズミュージックも手がけるのですが、曰く、ノイズ音楽もドミナントモーションで進行するらしいです。ノイズの圧縮具合や密集度などの変化でドミナントモーションと同じような効果をもたらすのだそうです。その意味で、彼曰く「ノイズも和声も一緒」ということです。 これを別の言葉で表現すると、「緊張と緩和」とも言えると思います。「不安定から安定」とも言えると思います。また、和声でドミナントからトニックへ落ち着くことを「解決する」と言います。全ては、ある動的な状態から次の局面に移るという「流れ」であると言えます。
この流れのバランスが作曲の品質を決める一つの大事な要素になりますね。
私は、よく和声進行をフィギュアスケートに例えるのですが、和声の各機能にそれぞれどの和音(コード)を当てるのかによって当然曲の色合いが変わってくるわけですが、それは、ちょうどスケートで言うところのジャンプの種類や着地の仕方、次へのジャンプへの間隔だったりすると思います。 曲によっては、解決を意図的に遅らせてずっと浮遊していることがあります。スケートでジャンプしっぱなしというのは非現実的ですが、飛んだまま一向に解決せずフワリフワリしている様も、まさしく浮遊していますね。 朝鮮半島のサムルノリなどで有名な「農樂」という音楽では、民族打楽器が数多の伝統的リズムパターン・チャンダンを打ち鳴らしながら、ひたすら繰り返すうちに、テンションとテンポを上げていきます。そしてテンションが最高潮に達したところでキメのリズムに入ったり次のチャンダンに入ったりします。これもドミナントモーション的と言えます。 ずっとワンコードで動いているフリージャズや環境音楽もありますが、ドミナントモーションを消すことも一つの表現手段ですね。 音楽の流れ、時間の流れ、または、時に視覚的な表現の流れに於いてでも、ドミナントモーションの概念は、創作や演奏・鑑賞のための解釈に役立つかと思います。 #和声 #コード進行 #カデンツ #終止 #作曲 #吹奏楽 #作曲デザイン #DAW #DTM
