民謡分析2『あんたがたどこさ』

 2019年度全日本吹奏楽コンクール課題曲I『「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲』(林大地作曲)に、タイトル通り、わらべうたの『あんたがたどこさ』が素材として使用されています。  今回は、この『あんたがたどこさ』を分析してみます。民謡というのはそもそも口伝のもので、楽譜が介入するのは、民謡の生命感を主体にして見れば野暮なものかもしれませんが、しかし生命科学と同じく、解剖研究して生命の本質がわかることもあります。(実存は生命の「流れ」にありますが。)  ちなみに、この時点で私は、課題曲Iをちゃんとスコアリーディングしていませんので、このオリジナルのわらべうたがどのように扱われているかはまだ知りません。なので、これが課題曲にトライする方にとって実質的にどの程度役立つかはわかりませんし、わらべうたそのものとしてこのうたに取り組まれる方にとっても、こんなこといちいち考えてたら実際に歌うときにぎこちなくて仕方ないと思いますが、知って理解しておくことは、少なくとも損はしないと思いますし、ここから新たな景色や理解を得られるかも知れません。では、参ります。

 まず、例によって、幼児も含めて歌唱のしやすい音域の調を選択し、今回はニ調で作譜しました。音楽学者・東川清一氏の分類方法で言えば、このわらべうたは「陽類ニ調ラ旋法」となります。所謂、「民謡音階」ですね。「類」の陰陽は、スケールの中に半音があるかないか、で決まります。旋法は、東川式に読めば、二全音(長三度)を「ド〜ミ」と読むことになります。ここではF音〜A音ですので、F、G、A音を「ド、レ、ミ」と読む。D音は「ラ」です。ですので、「ニ調ラ旋法」となります。  民族音楽学者の小泉文夫氏の著書に詳しいですが、日本の音階には核となる「核音」という音があり、核音同士完全4度で囲んだ音列を「テトラコルド」(OR テトラコード)と呼んでいます。この核音が、今回はD音とG音、間に挟まれた中間音にF、付加音としてA音、となります。  ストーリー性のある歌ですが、楽譜には、A:対話、B:語り、B':Coda、と分けました。Aの対話構造をcallとresponceで分けて記しました。Bからはresponce側がそのまま語っていますね。Bのフレーズ構造で終止に向かっているのでCodaはB'としました。  特に、解決的核音D音をオレンジ色に、G音を青色にしました。ここは、歌詞も全て「さ」が当てはまり(Codaを除く)、音と言葉の着地が非常によく合っています。  全体的に「ぴょんこ型」の付点八分+十六分音符のリズムに彩られていますが、この「さ」を含む着地のモチーフを「刺繍型」「上行型」「下行型」の3つに分けてみました。一番初めの刺繍型「G-F-G」はこの一回きりしか出てこないですが、四角で囲ったモチーフの延長だと理解すれば、上行型と解釈することもできます。コール&レスポンス、核音への着地の流れ、モチーフの型、どれもバランスよく配置されています。  Bで、この歌で最大跳躍の完全5度が最初に出てきます。この完全5度ジャンプからのらりくらりと核音Dに降りてきていると言えます。ジャンプした後の一瞬の無重力状態のように、四角で囲った部分は幾分浮遊的で、後になるほど核音を交えて安定的になります。 B'のCodaでは、同じようにジャンプ(ここは長3度)から降りてきますが、最後に再びゆっくりと四分音符でGの核音で終止します。

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