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民謡分析1『Swansea Town』(ウェールズ)

 今日は、とある高校の吹奏楽部でホルストの『吹奏楽の為の第2組曲』の合奏をしました。(原題でいくと、「吹奏楽のための」の部分は「ミリタリー・バンドのための」になります。)  

 吹奏楽の古典と呼べる曲ですが、『第1組曲』の絶対音楽的性格とは違い、全楽章にイングランドの様々な民謡や舞曲が引用されています。第1楽章の「マーチ」なんかは、第1マーチ、第2マーチ、トリオとすべて違う引用素材を使っているのに、全く違和感なく、且つマーチとして成立している点など、流石と思います。


 私は幼児音楽研究もしていますが、今日は、幼児歌曲教材の観点も含めて、第1楽章の「マーチ」の第2マーチとして登場するウェールズ地方の民謡『Swansea Town』のメロディーを分析してみようと思います。

   民謡というのは、その土地で長きに渡って万人に愛唱されてきているので、親しみやすく歌いやすいですよね。ですので、子どもたちが歌うにもとても良いです。

コダーイは、子どもが自国のフォークソングを歌うことを言語の確立も含め推奨していましたが、歌の教材として、世界中の民謡は恰好の教材になります。


 この『Swansea Town』も子どもと一緒に楽しんで歌えそうな歌です。(歌詞の内容は置いておいて。)ホルストはこの曲を合唱作品にも使っています。

合唱ではD major(ニ長調)、吹奏楽ではF major(ヘ長調)で書かれています。吹奏楽は器楽的に演奏しやすい調性も考慮されたかと思います。(因みに、旋律もほんの少しだけ違いますが、器楽としてのアレンジかと思われます。)
合唱は、歌いやすい調性になっていますが、ここでは、特に幼児の平均的な音域を考えて、長2度下げてC major(ハ長調)にアジャストしました。


 形式は、A-B-A’-B’(4小節ずつ)。最低音はB2(シ)、最高音はD4(レ)、音域幅は10度、幼児が歌うには少しだけ広めですが、許容範囲でしょう。


   Aの段の前半フレーズと後半フレーズを四角で囲みました。前半はC〜G(ド〜ソ)の5度、後半は、G〜D(ソ〜レ)の5度の中でフレーズが作られています。この音域の移行は、歌唱・演奏表現のヒントになるでしょう。

 アウフタクトを中心に同一方向のアルペジオをオレンジ色で示しました。アルペジオの旋律は和声的な表現に直結しますが、このような動きはアジアの民謡にはほぼでてきませんので、こういう動きは西洋的と言えます。そして、このアルペジオのアウフタクトや完全4度上行に跳躍した後に、順次進行を中心に緩やかに下る、というパターンが多く見られます。飛んだ後に反対方向に順次進行するのは、コラールの厳格書法などでも定石です。このような動きが自然な歌いやすさを確保しています。  

Aの後半では八分音符で降りたすぐ4度跳躍という勢いのある動きになっていますが、Bでは順次進行の下行型でゆるやかに戻しています。8小節単位で見てもバランスの良さを感じます。


 全体的に跳躍も4度が中心で、順次進行も多く、歌詞としても一音一音節が多いので、歌いやすいのですが、強いて言えば最後のB’で短6度下行跳躍が出てくる箇所はやや難しいでしょうか。
また、最後の最後に導音→主音の半音がでてきますが、後の半音は順次進行の流れで出てくるくらいで、半音の少なさも歌いやすさに繋がると思います。しかし、逆に言えば、最後の導音→主音はキメの部分とも言え、ここのカデンツ(終止型)は丁寧に歌いたいところです。  

歌唱、吹奏楽での演奏などで、ご参考になれば幸いです。

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