こどものうた


 3月2日に京都のKBSホールロビーにて、「こどものための新しいうたコンサート」があり、そこで新しく創作童謡などを発表します。


 この催名、よくできていて「こどものための(新しい)うた」なんですね。「こどものうた」ではなく。こどもに対する愛情とリスペクトを感じて、僕は好きです。

 「こどものためのうた」というのは、「こどもが歌うためのうた」と「こどもが聴くためのうた」と、「その両方を目的としたうた」、と分けられると思います。しかし、どのみちこどもは聴けば勝手に歌って覚えていきます。だから作り手としては、作曲も作詞もそのことに十分配慮する必要があると思います。  作曲に関して言えば、まず挙げられるのが音域の問題です。よくこどもの発声練習なんかを見ていても、大体ド〜ドのオクターブを基準にしているようですが、実際のこどもたちの音域はその3度下の「ラ〜ラ」くらいです(月齢、男女、個人差による)。なので最高音や最低音が高すぎたり低すぎたりする場合は、いくらか移調してあげることで、歌いやすさは格段に違ってきます。オクターブ前後の音域幅を持つうたならば、移調という手段で解決できますが、やっかいなのは、音域が広いうたです。10度以上になると、移調しても最低音か最高音どちらかがこどもの音域と合わなくなってしまいます。ですので、こどもがうたう前提のうたは、作曲の段階からそのことに留意する必要があります。上も下も大いに駆使したほうがダイナミックな表現ができるのはわかりますが、オクターブやそれ以下の音域でも十分に(こどもにとって)良いうたは作れます。  次に、音程も注意が必要な要素です。増4度などの、歌手でも歌いにくいような音程はこどものうたにはさすがにあまり出てきませんが(それでも、他の増音程含めたまに出てきます。)、当然跳躍が広すぎる音程はとりにくいです。順次進行を中心に3度や4度、5度くらいでまとめると、3、4歳児くらいでも歌いやすいと思います。オクターブは、大人は感覚的にも身体的にもついていけますが、こどもの場合感覚的にはわかっていても、声で跳躍することは決して易しくありません。


 音程とも関わってきますが、フレーズ(旋律線)も勿論、自然で歌いやすい、音楽の修辞学的な説得力があると良いと思います。よくあるパターンが、アルペジオ旋律ですが、和声音に連続ジャンプするので、耳触りは良いですが、案外アルペジオジャンプはうたうには難しく、かつ「旋律美」を損ねかねませんので、多用は注意です。(が、こどものうたやジブリのうたには頻出します...『となりのトトロ』『さんぽ』『坂の上のポニョ』あたりを口ずさめば、全部アルペジオ旋律。)こどもの躍動感の表現には一役買っていますが、うたとしての自然な旋律美からは遠いと思います。和声の概念が成立する前の教会音楽では、うたは「線」として描かれていたように思います。  そこに、ふさわしい歌詞の言語の音と意味をのせていく...童謡、こどものうたの創作はその規模や情報量に比べて斯様に難しいものだといつも感じます。  このあたりのことは、拙著論文『幼児の発達に適合した幼児歌曲の作曲の試み-楽曲分析とわらべうたをヒントに-』に詳しく書きましたので、ご興味のある方は是非ご一読いただければと思います。https://www.lib.osaka-kyoiku.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=v3search_view_main_init&block_id=631&direct_target=catdbl&direct_key=%2554%2544%2530%2530%2530%2533%2530%2536%2535%2539&lang=japanese#catdbl-TD00030659  さて、3月2日はいくつかのうたを発表する予定ですが、上記のような、「こどもが歌うためのうた」として作曲した創作童謡(音域幅は長6度、所謂民謡音階)と、例えばNHK「みんなのうた」などで流れることをイメージして作った「こどもが聴くためのうた」と、立ち位置の違ううたをいくつか用意しています。そのほかに、おそらく上記論文巻末でも出てくる創作わらべうたも披露致します。  日頃、周辺の同業者には童謡やこどものうたに向かっている作家の先生がそれほどいらっしゃらないので、当日は、こどものうたを作られている先生方とお会いすることも楽しみにしています。


 ご興味お持ちの方は是非お越しくださいませ。こどもも大人も大歓迎です^^ 2019年3月2日(土) 「こどものための新しいうたコンサート」 14位開演(13時半開場) KBSホール・ロビー 入場無料 うた:もりたまゆこ ピアノ:もみやまさやか 作曲:松圍洋二、久保田翠、山口聖代、朴守賢、岡田愛、藤田茉奈美 企画:森田万柚子、椵山さやか、柳楽正人

主催:カルテ企画 協力:京都市立芸術大学キャリアデザインセンター





  • Facebookの社会的なアイコン
  • Twitterの社会のアイコン
  • YouTubeの社会のアイコン

© 2019 by Asian Magnolia Music
since 12 Feb. 2019